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集団就職世代の想い出といま

北東北の奥深い山の集落から15歳の誕生日を迎えたばかりの少年が大都会の町工場に就職した。それから60年ほどが過ぎたいま、さまざまな想い出とこれからを綴る。

ストーブで食パンを焼いてはいけないか

 定時制高校では簡単な給食があった。冬には石炭ストーブで教室を温めていたが、給食に食パンが出るとストーブで焼いて食べる人がいた。ホームルームの時間にそのことがテーマとなり、多くは「ストーブで焼くことを禁止すればよいじゃないか」といった方向に傾いていった。

 私の意見は少し違っていた。食パンはトースターなどで焼いて食べるのが一般的だ。この教室にはたまたまストーブがありパンを焼くことができないわけではない。だから暖房用のストーブで焼いて食べる人が出てきた。それを単に禁止するというのはおかしい。本来なら焼いて食べたほうがおいしいのだから、パンを焼けるように改善するとか方法を考えたほうが良いと思うと主張した。何人かがうなずいていたが、その主張が大半を占めることはなかった。

 ホームルームが終わると空き時間を見て、職員室に担任の先生を訪ね「私の主張が間違っているのでしょうか」と食いついた。先生は「そんなことはない。大勢の生徒たちが賛成していたではないか」という。「ありがとうございます。わかりました」と言って引き上げた。とはいうものの、ストーブの周りが改善されることはなかった。同時に多くの人は食パンを焼くことをやめバターやジャムをつけて食べていた。

 このころから、どうも”黙っていられない”といった感情が強まったような気がする。