集団就職世代の想い出といま

北東北の奥深い山の集落から15歳の誕生日を迎えたばかりの少年が大都会の町工場に就職した。それから60年ほどが過ぎたいま、さまざまな想い出とこれからを綴る。

旅先で仕事の勧め~ワーケーション

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い「ワーケーション」(ワークとバケーションの造語)なる新語が賑やかである。高齢者のパート仕事には全く関係ないがサラリーマン経験者としては無関心ではいられない。

 休暇を取り家族で旅に出る。その旅先で「仕事」をしなさい~というもの。有給休暇の取得率を高める、優秀な人材を集めやすくなる、受け入れ自治体にとってもメリットがある、観光業にもメリット、働き方改革にそう取り組みなど賛同者の声がずらりと並ぶ。今世紀初めごろ米国で始まったそうである。いまコロナ感染を契機に在宅勤務やらテレワークが広がり、一歩進んで「ワーケーション」の普及に政府までが推進の旗を振るようになった。 

 コロナ感染で外国人観光客がめっきり減ってしまった。自粛で国内旅行者も減ってしまった。サラリーマンは在宅勤務とかテレワークで仕事をする。満員電車での通勤が少なくなり車で出かける数も減り排ガス量も少しばかり抑えられたという。いっせい休校で子どもたちはパソコンで授業を受ける光景が珍しくない風景になった。

 非常事態やアラートが解除されてから感染者は世代を超えて増大している。いまはお盆だから「帰省」を無理に抑えることもできない。一方で「gotoトラベル」を活用して旅を楽しみましょうとのキャンペーンが繰り広げられる。そうしたなかで休業者や失職者の数もようやく問題になり始めてきた。コロナ禍が長引くのは間違いなさそうだからこれからまだまだ休業、失職者が増えるのだろう。

 時代は進化しているのだから「ワーケーション」なんて「ダメだ」と大声を出そうとは思わない。いまパート、元勤労者として思うのは、これは「休暇」なのか「勤務」なのかという単純なこと。有給休暇中に旅先で仕事をすると「割り増し手当て」が支給されるのか。休暇日数が割り引かれるのか。そうした制度が労使合意されているのだろうか。その前に仕事環境が整っているかが大問題ではある。

 意外と成果を求める立場からすると「ワーケーションだから」といって、夜中でも報告を求めることもあろう。まさに休暇どころではなく「24時間勤務」状態にならないだろうか。

 IT技術の進化と労働環境の整備には「労働時間」管理や「休暇制度」の改善確立が欠かせない。在宅勤務で「通勤手当」廃止だけでは「片手落ち」であることは明らかだ。むしろ「住宅手当」や「家族手当」を増額し、時給増の給与体系に切り替えるべきではないだろうか。