集団就職世代の想い出といま

北東北の奥深い山の集落から15歳の誕生日を迎えたばかりの少年が大都会の町工場に就職した。それから60年ほどが過ぎたいま、さまざまな想い出とこれからを綴る。

受験対策の『考えるヒント』ずばり

 大学受験を前に、年配で国語を担当している先生が”今度の試験には必ず『考えるヒント』が出るのでよく読んでおくように”とアドバイスしてくれた。しばらくして結構高い箱入りの本だったが買い入れて、受験対策として読み進んだ。この本は評論家、作家・小林秀雄氏がまとめ、当時人気の書籍だったらしい。だからこそ先生は試験に出題されると指摘したのだろう。それが◎◎大学の試験に出題されたのである。本の内容も出題内容も思い出すことはできないが、先生のアドバイスのおかげで少しは点数を増やすことができたと思う。それだけは確かである。

 1964年度卒業(1965年3月)生で、大学受験したのは当方のほかに男子1人、女子1人だった(その後男子1人が進学している)。当方と同じように御茶ノ水の大学を受験した友人は残念ながら合格できなかった。彼は歯科技工士をしながら定時制に通い、学内の人気者で英語が得意な生徒だった。その後北陸の大都市で事業主になっていると聞いた。もう一人の女性は短大に進み、その後すし店経営のおかみさんになったと聞く。こんどの同級会で会うことが楽しみである。

 進学後の夏休み前だったと思うが、当方と彼女が定時制高校に呼ばれ、4年生を前に進学の心構えとか勘所みたいな自分の経験を話したことを想い出す。