集団就職世代の想い出といま

北東北の奥深い山の集落から15歳の誕生日を迎えたばかりの少年が大都会の町工場に就職した。それから60年ほどが過ぎたいま、さまざまな想い出とこれからを綴る。

野蚕通信ー糸を吐く昆虫は無数

 野蚕(ヤサンと読む。ワイルドシルク)について、日本野蚕学会会長の赤井弘氏は『野蚕糸の知識ABC』で次のように解説している。

 糸を吐く昆虫は地球上に多数生息し、大小さまざまな繭を作り、それから生糸や紬糸を作ることが可能である。「自然界に生息する野生の絹糸昆虫は多種多様で、繭の大きさ、繭色、糸の構造、抗菌性など多くの点で個性を持つ」、そのために「付加価値の高い今後の素材として注目されている」。

 そのうえで「野蚕または野蚕糸とは、広義には家蚕以外のすべての絹糸虫、とくにその繭から糸が採れるものを指す」と記している。

 そのうえで、主な絹糸昆虫種の一覧表を示している。

  カイコガ科      カイコ、クワコ、ウスバクワコ、インドクワコ

  ヤママユガ科     テンサン、サクサン、タサールサン、ムガサン

             エリサン

  カレハガ科      マツカレハ、ゴノメタ、ボロセラ、パキパサ

  ギョウレツケムシ科  アナフェ

  ミノガ科       オオミノガチャミノガ

  ヤガ科        キノカガ  

 以上であるが、のちの資料では、ヤママユガ科にウスタビガ、クスサン、シンジュサン、ヨナクニサン、クリキュラ(黄金繭)、アゲマ・ミモザエ、ロスチャイルドなどが追加されている。またでもシロチョウ科ースゴモリシロチョウなどが追加されている。まさに地球上には環境に応じて多種多様な野蚕が生存していることを示している。

 蚕も野蚕も昆虫であるが、昆虫外のクモが吐く糸=クモの巣=はいったい何だろうか。もっともしなやかで最強の糸とされており、野蚕研究者の間では「ワイルドシルク」の仲間として熱心に研究開発が続いている。昆虫、蚕以外の作る糸の発見がこれからも続くだろうと思う。実に楽しみである。