集団就職世代の想い出といま

北東北の奥深い山の集落から15歳の誕生日を迎えたばかりの少年が大都会の町工場に就職した。それから60年ほどが過ぎたいま、さまざまな想い出とこれからを綴る。

野草の根「トコロ」を食べた想い出

 「食品ロス」についてメモしたとき、子どものころ「トコロ」を食べていたことを想い出した。トコロというのは、山の草地に自然に生えており、その根っこを掘り起こしてゆでて食べていた。根っこは黄色でひげをいっぱいつけていた。少し苦みがあったが腹が減っているときなど家族でおやつのように食べたのである。

 この「トコロ」は本当は何だったろうか。調べてみると「オニドコロ」とか「ヒメドコロ」があり、一般に「トコロ」と呼ばれているらしい。その「オニドコロ」は食べられないとあり「ヒメドコロ」は食べられるとある。但し「オニドコロ」も薬として用いられたらしいし、少々なら食べられるという説もある。

 どうも、子どものころにおやつのように食べたのは「オニドコロ」ではなかったかと思うのだが違うだろうか。苦みがあったので黄な粉をつけてたべたものである。当時の家族の顔が浮かび上がる懐かしい想い出である。 

 ほかに自然の食草といえば、あざみ、うるい、こごみ、ぜんまい、よもぎ、みつば、せり、にら、ひる、みず、しどけ、ゆりなどなどいっぱいあった。畑の野菜と合わせれば自然の野菜類に困ることはなかった。ある意味で自給自足の生活であった。