集団就職世代の想い出といま

北東北の奥深い山の集落から15歳の誕生日を迎えたばかりの少年が大都会の町工場に就職した。それから60年ほどが過ぎたいま、さまざまな想い出とこれからを綴る。

新歓でつかんだ人生

 この時期は「新歓」行事が盛んである。その「新歓」で出合ったのが経済学を研究するというサークルであった。

 1960年代半ばに夜間定時制高校から、おかげさまで御茶ノ水の私立大学夜間部(第二部)に入学できた。夕方登校すると学内の広場では各サークルの「新歓」行事である呼び込みというか勧誘活動が活発に行われていた。当方は「経済学部」を選んでいたこともあって「経済」に的を絞って説明を受けた。その中でマルクス資本論を読めるようにする」との誘い口上に入部を決めた。

 なぜ「マルクス」かと考えるのが一般的と思う。当時の発想は「マルクス」ではなく資本論を理解するほうに重きがあった。それは定時制高校での授業中に歴史的名著のひとつとして「国富論」と資本論ほかが紹介された。先生はいろいろ説明を加えてくれたが、経済学の原理、原則を解明した論文として多くの人が関心を持っている名著である~と話していたような気がする。その資本論にじっくり向き合えるならぜひ仲間に加わろうといった気持であった。

 新入部員歓迎会には先輩やOBも参加したが、新一年生が10人近く参加した。なかには体も話の内容も”モサ”と言えそうな人も含めて個性的な顔ぶれが印象的であった。数人が「『資本論』を読めるというので入部した」と動機含めて自己紹介したのを記憶している。

 以来4年間、このサークルに身を置き、現在もOBの一員として時々会合に参加することがある。大学生として「新歓」行事で出合ったことがいまの人生のスタートと言えるかもしれない。