集団就職世代の想い出といま

北東北の奥深い山の集落から15歳の誕生日を迎えたばかりの少年が大都会の町工場に就職した。それから60年ほどが過ぎたいま、さまざまな想い出とこれからを綴る。

「もったいない」を生活リズムに取り入れたい

 捨てるなんて”もったいない”とか”もったいない”から食べなさいなどとよく言われて育った。これは「無駄にしてはいけない」とか「もっと大事に使いなさい」といった伝統的な生活様式と一体だったと思う。

 いつの間にか「大量生産・大量消費」とか「短サイクル」「モデルチェンジ」などがもてはやされて、まだ使えるものまでが平気で捨てられるスタイルが定着してしまった。そうしたことが地球環境問題とも深く関わっていることがわかり少しは「リサイクル」などの形で揺り戻しがあったような感がする。しかし話題の「食品ロス」に見られるように「もったいない」はいま現在でも大きな課題である。

 この「もったいない」はかつてわが国で大きく取り上げられたことがある。ケニア環境保護活動家でノーベル平和賞受賞者、国会議員でもあるワンガリ・マータイ女史(1940~2011)が2005年に来日し「もったいない」との言葉を知り、同感したうえで”もったいない”運動を世界に広げようと訴え、自ら運動を推進した。しばらくの間マスコミなどでも大いに注目されたが、定着することなく、近年では「おもてなし」のはやり言葉に押されてか話題と関心が薄いのが残念である。

 格差と貧困や「食品ロス」などの問題を考えながら、改めて「もったいない」を自身の生活の中にきっちりと位置づけた日々を送ろうと思う。