集団就職世代の想い出といま

北東北の奥深い山の集落から15歳の誕生日を迎えたばかりの少年が大都会の町工場に就職した。それから60年ほどが過ぎたいま、さまざまな想い出とこれからを綴る。

映画「見上げてごらん夜の星を」

♪♪見上げてごらん夜の星を♪♪

♪♪小さな星の 小さな光が♪♪ 

♪♪ささやかな幸せをうたってる♪♪ 

ご存じ坂本九がヒットさせた見上げてごらん夜の星をの一節である。

「見上げてごらん~」は、1960年にミュージカルとして大阪で上演され人気となった。その主題歌として誕生したらしい。その後歌手・坂本九の希望もあって同名の映画が製作されることとなり、坂本が主役を務めて歌った。この映画も人気を博した。

 実はこの映画のロケ先が、当方が通っていた定時制高校の新築校舎であった。映画そのものは観ていないが、歌は仲間たちと口ずさみロケ地も話題にして楽しんだものである。

 当方が入学した定時制高校は、区立中学校の校舎を間借りしていた。当時の校長先生は、頭がテカテカに光っていた。ある先生は「毎日米ぬかで磨いているらしい」と教えてくれたことがあるが、それほどに身だしなみに気を使う人であり行動力のある校長先生だったらしい。校長の働きかけもあって、間もなく定時制高校をベースに都立工業高校が設置されることになった。1963年4月に普通課程のみだった定時制高校が工業高校に校名を変更して全日制の工業高校で定時制普通科が運営されることになった。

 新校舎が落成式を行ったのは1963年12月であったが、その以前に校舎は出来上がり利用されていたのである。その新校舎が映画の舞台になった。映画も定時制高校生の坂本九が全日制で同じ机を使う女子高生との手紙交換がきっかけで進展する物語であり、落成式前の新校舎が舞台に選ばれたものと思われる。

 ちなみに映画では、坂本のほか榊ひろみや先生役として菅原文太らが出演している。

 当方は、当時3年生で、いわば定時制の生徒会長を務めていたので落成式では「感謝の言葉」とでもいうか自筆の巻紙を読み上げたのだった。